そのスキル、本当に需要ある?ゲーム業界の求人から市場価値を見極める方法
ゲーム業界の求人からスキル需要を読み解く
自分が身につけてきたスキルは、転職市場でどの程度求められているのでしょうか。
ゲーム業界の求人を見ると、UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジン、PhotoshopやMayaといった制作ツール、C#やC++などのプログラミング言語まで、さまざまなスキルが並んでいます。
しかし、特定のツールを使えることと、市場価値が高いことは必ずしも同じではありません。
求人では、「何を使えるか」だけでなく、そのスキルを使ってどのような業務を担当してきたか、どの程度の実務経験があるかまで確認されます。さらに、設計やディレクション、マネジメントまで任せられるかなど、複数の条件を組み合わせて人材を探しているケースもあります。
本記事では、弊社に寄せられた案件/求人情報をもとに、実際にどのようなスキルや経験が求められているのかを確認しながら、求人情報から自分の市場価値を見極める方法を解説します。
ゲーム業界における「スキルの市場価値」とは
ゲーム業界におけるスキルの市場価値を考える際、「Unityを使える」「Photoshopを使える」といったツール名だけで判断するのは十分ではありません。
実際の求人を見ると、同じツールでも職種によって求められる使い方は異なります。
たとえばUnityの場合、クライアントエンジニアではC#などを使ったゲーム機能の設計・実装、UI/UXデザイナーではUIの組み込みや演出、演出系のスクリプターではTimelineなどを利用したカットシーンや演出の制作など、職種によって使い方はさまざまです。
Photoshopについても同様です。2Dデザイナーではキャラクターや背景、イラスト制作、UI/UXデザイナーでは画面設計やUI素材制作、3Dデザイナーでは3Dモデルに使用するテクスチャ制作など、担当領域によって求められる経験は変わります。そのため市場価値を考えるときは、求人でどのようなスキルや経験が求められているかを確認したうえで、「そのツールを使えるか」だけでなく、「そのツールを使って何ができるか」まで整理することが重要です。
なお、求人件数だけで市場価値のすべてが決まるわけではありませんが、現在どのようなスキルや経験に需要があるのかを把握する材料にはなります。
求人で繰り返し求められる経験・スキルが需要を示す
自分のスキルにどの程度の需要があるのかを知る一つの方法が、複数の求人で繰り返し求められている条件を確認することです。弊社に寄せられた案件/求人情報について、必須要件に記載されたスキルを確認すると、次のような傾向が見られました。
・Photoshop:362件
・Unreal Engine・UE系:205件
・Maya:125件
・Unity:113件
・C#:82件
・C++:78件
※必須要件欄に各キーワードを含む案件/求人を集計。同一の案件/求人に複数のスキルが記載されている場合があります。
こうした数字から、ゲーム開発で使われる複数のツールや技術が、多くの求人で求められていることが分かります。ただし、「Photoshopの求人が多いからPhotoshopを覚えればよい」と単純に考えることはできません。実際には、「Photoshopを使用したゲームUI制作経験」「Mayaを使用した3Dモデル制作経験」「Unityを使用したゲーム開発経験」「Unreal Engineを用いた実装経験」など、ツール名と実務経験がセットになっている求人が多くあります。
求人件数は需要を知る一つの目安になりますが、そのスキルを使ってどのような業務ができる人を求めているのかまで確認することが重要です。
職種・開発環境・プロジェクトによって求められるスキルは変わる
今回確認した案件/求人情報を職種別に見ると、デザイナーが941件、プランナーが687件、エンジニアが535件など、さまざまな職種の募集が含まれています。
職種が変われば、評価されるスキルや経験も異なります。
エンジニアではUnityやUnreal Engine、C#、C++などの技術だけでなく、設計、実装、デバッグ、最適化、サーバーやクラウド環境に関する経験などが求められています。
デザイナーではPhotoshopやMayaなどのツールに加え、UI設計、キャラクター・背景制作、3Dモデリング、モーション制作、品質管理など、担当領域に応じた経験が求められます。
プランナーでは特定の制作ツールよりも、仕様書作成、施策・イベント企画、レベルデザイン、マスターデータ設定、進行管理、運営業務など、実際に担当してきた業務が評価材料になりやすい傾向があります。
さらに、スマートフォンゲームかコンシューマーゲームか、新規開発か運営タイトルかによっても求められる経験は変わります。ゲーム業界全体の求人数を見るだけではなく、自分が目指す職種や開発領域に絞って求人を比較することが重要です。
ゲーム業界の求人からスキル需要を見極める方法
求人数だけでなく「必須スキル」と「歓迎スキル」を比較する
求人情報を見る際は、条件として記載されているスキルが「必須」なのか「歓迎」なのかにも注目しましょう。
必須要件には、そのポジションを担当するうえで必要な経験が記載されます。一方、歓迎要件には、必須ではないものの、担当範囲やキャリアの選択肢を広げる経験が記載されることがあります。たとえば正社員のUIデザイナー求人では、Photoshopを利用したデザイン経験やゲームUI制作経験を必須としながら、Unityでの実務経験や、リード経験・マネジメント経験などを歓迎要件としているケースがあります。エンジニア求人でも、特定言語を使った開発経験を必須としながら、AWSやGCPなどのクラウド環境、CI/CD、技術選定、メンター経験などを歓迎する求人があります。
このような求人を複数見比べることで、「その職種で基本的に求められる経験」と「担当範囲や選択肢を広げるための経験」を分けて考えられます。現在の自分に何が足りないのかを確認するときにも、必須要件と歓迎要件の違いは役立ちます。
複数求人に共通するツール・技術・経験を洗い出す
一つの求人だけを見ていると、その条件が特定企業だけのものなのか、同じ職種で広く求められているものなのか判断しにくくなります。
そこで、同じ職種の求人を複数並べ、共通している条件を確認してみましょう。
たとえばゲームプランナーの場合、実際の案件/求人情報では、必須要件に「仕様書」を含むものが121件、「進行管理・進捗管理」を含むものが110件確認できました。このことからも、ゲームプランナーには企画立案だけでなく、仕様を具体化する力や、開発を進めるために他職種と連携・調整する力が求められていることが分かります。
エンジニアであれば、ゲームエンジンだけを見るのではなく、プログラミング言語、設計、開発環境、クラウド、チーム開発などを比較します。
デザイナーであれば、制作ツールだけでなく、担当できるアセット、得意とするデザインテイスト、ゲームへの組み込み、ディレクション経験などを見ていきます。
複数求人を比較することで、「その職種で共通して求められやすい経験」と「求人によって差が出る専門性」を整理しやすくなります。
担当業務や経験年数から企業が求める実務レベルを読み取る
求人では、スキルだけでなく「〇年以上」といった経験年数が条件になるケースも少なくありません。
弊社に寄せられた案件/求人情報では、必須要件に具体的な経験年数が記載されているものが995件ありました。
記載されている経験年数をキーワード別に集計すると、次のような傾向が見られました。
・1年以上:201件
・2年以上:166件
・3年以上:574件
・5年以上:146件
※一つの案件/求人内に「実務経験3年以上」「マネジメント経験5年以上」など、複数の経験年数が記載される場合があるため、各件数の合計は995件を上回ります。
なかでも「3年以上」を条件とする求人が多く見られます。
ただし、「3年間働けば市場価値が高くなる」ということではありません。企業が見ているのは在籍年数だけでなく、その期間に何を任され、どこまでの業務を担当してきたかです。
求人を見る際は、経験年数だけでなく具体的な担当業務まで確認することで、求められている実務レベルをより正確に捉えられます。
求人情報をキャリア戦略にどう活かすか
自分の経験と求人要件を照らし合わせて不足スキルを把握する
求人情報は、応募する企業を探すためだけのものではありません。
自分の経験を求人要件と比較することで、現在の市場で求められている経験との適合度や、次に身につけるべき経験を確認する材料にもなります。まずは、自分が目指している職種の求人を複数確認して、必須要件を書き出してみましょう。それぞれの要件について、以下の3段階で整理すると、自分の現在地が見えやすくなります。
・実務で経験している
・一部経験している
・経験がない
たとえばUnityを使った経験があったとしても、目指すエンジニア求人でC#を用いた機能設計・実装や最適化まで求められているのであれば、Unityを使った開発経験を増やすだけでなく、より実践的な設計・実装や最適化の経験を積むことが、選択肢を広げることにつながります。
一方、自分では強みだと思っていなかった仕様書作成や進行管理の経験が、複数の求人で求められていることに気づく場合もあります。求人との比較は、不足しているスキルだけでなく、すでに持っている経験のうち、市場で評価される強みを見つけるためにも有効です。
特定ツールだけでなく別の現場でも活かせる経験を言語化する
自分の市場価値を考える際には、特定のツールやプロジェクトだけに依存しない経験を整理しておくことも重要です。
たとえば、「Unityを3年間使用した」だけでは、実際に何ができるのか十分には伝わりません。
・Unityを使用したスマートフォンゲーム開発で、機能設計から実装、デバッグまで担当した
・Unity環境でUIの組み込みや演出制作を担当し、プランナーやエンジニアと連携して実装まで進めた
このように担当業務まで整理することで、その経験を別の開発現場でも活かせるかを判断しやすくなります。これはデザイナーやプランナーでも同じです。「Photoshopを使える」「仕様書を書ける」というスキル名だけではなく、どのような課題に対して、どのような役割を担い、どこまで自分で対応したのかまで言語化しておくことが大切です。
求人情報を見る際にも、ツール名だけを拾うのではなく、そのツールを使って企業がどのような業務を任せようとしているのかまで確認してみましょう。
現在の求人需要と今後伸ばしたい専門性を分けて考える
求人を確認すると、現在需要のあるスキルだけでなく、その先のキャリアで求められる経験も見えてきます。
特に正社員求人の中には、実務担当者としての制作・開発経験に加え、リードやマネジメント経験を求めるものもあります。今回確認した正社員求人では、必須要件に「マネジメント経験」を含む求人が46件ありました。
たとえば、エンジニアであれば技術選定やコードレビュー、メンバーの教育、デザイナーであれば品質管理やディレクション、プランナーやPMであればプロジェクト全体の進行や関係者との調整などです。
もちろん、すべてのゲームクリエイターがマネジメントを目指す必要はありません。求人では専門性の高さを求めるポジションもあり、キャリアの方向性は一つではありません。専門性をさらに高めるキャリアもあれば、担当範囲を広げてリードやマネジメント、ディレクションなどの役割へ進むキャリアもあります。
求人を見る際には、次の2点を確認すると、今後積むべき経験を考えやすくなります。
・今の自分が応募できる求人で何が求められているか
・次に目指したい役割やポジションではどのような経験が求められているか
現在の求人需要を確認しながら、自分が今後どの専門性や役割を伸ばしていきたいのかを分けて考えることが、長期的なキャリア形成につながります。
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ここまで紹介した方法では、現在の求人からスキル需要を確認できます。一方で、中長期的なキャリアを考える際には、今後どの職種やスキルの需要が変化していくのかという視点も重要です。現在の求人動向と将来の需要変化をあわせて見ることで、今後身につけるべきスキルを考えやすくなります。
まとめ
ゲーム業界におけるスキルの市場価値を考える際は、特定のツールや技術を持っているかだけでなく、それを使ってどのような業務を担当できるかまで確認することが重要です。求人情報では、必須・歓迎要件、担当業務、経験年数などを複数の求人で比較することで、現在求められているスキルや経験を把握できます。
また、求人情報は応募先を探すためだけでなく、自分がすでに持っている強みや、今後身につけるべき経験を確認する材料にもなります。希望する職種だけでなく、次に目指したい役割やポジションの求人も定期的に確認し、自分の経験と照らし合わせながら今後伸ばすスキルを考えていきましょう。
