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「面白い」と「売れる」の違いとは?ヒット作に共通するマーケティング視点

「あのゲーム、面白いのにどうして売れないんだろう?」あるいは「そこまでではない気がするのに、なぜか大ヒットしている」。ゲーム業界に身を置いていると、そんな違和感を抱く瞬間が一度はあるはずです。 「面白いゲーム」と「売れるゲーム」は、一見同じようで、実はまったく別の概念です。もちろん両方を兼ね備えることが理想ですが、現実の市場を見ると、その二つは必ずしも一致しません。なぜそのギャップが生まれるのか。ヒット作を生み出すために必要な視点とは何か。マーケティングの観点から、順を追って考えてみましょう。
目次

面白さの定義

「面白い」という言葉は日常的に使われますが、いざ定義しようとすると途端に難しくなります。ゲーム企画の現場でも、チームメンバー全員が「このゲームは面白い」と口を揃えていたのに、ユーザーにはまったく刺さらなかった、という経験は珍しくありません。会議室で全員が納得していたはずのコンセプトが、リリース後に静かに沈んでいく。そんな苦い経験をした企画者は、業界を問わず少なくないでしょう。

面白さとは主観的な感情体験であり、「誰にとって」「どんな状況で」「何と比べて」という文脈なしには成立しないものです。つまり、面白さを定義するには、ターゲットとなるプレイヤー像を先に明確にする作業が欠かせません。

体験設計の視点

ゲームデザインの世界では、面白さを「フロー理論」で説明することがあります。心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱したこの概念によれば、人は「難易度」と「スキル」が適切にバランスした状態にあるとき、最も深い没入感、いわゆるフロー状態を体験します。

敵が強すぎず弱すぎず、報酬がほどよいタイミングで与えられ、プレイヤーが「もう一回だけ」と画面に向き直る。この構造は偶然の産物ではなく、徹底した体験設計の結果です。

優れたゲームデザイナーは、チュートリアルから終盤コンテンツに至るまで、プレイヤーの心理状態を細かく制御します。どこで感情を高ぶらせ、どこで息をつかせ、どこで次の動機を与えるか。体験のテンポを意図的に設計することが、面白さの核心に他なりません。

プレイヤー心理との関係

面白さを設計するうえで欠かせないのが、プレイヤーの動機理解です。ゲームを楽しむ動機は大きく分けると、「達成感を得たい」「物語の続きを知りたい」「他者と競いたい」「コミュニティに属したい」「現実から距離を置きたい」といった方向に分類できます。

同じ「面白いゲーム」でも、動機が異なるプレイヤーには刺さり方がまったく変わります。ソロRPGの深い物語体験は、競技志向の強いプレイヤーには響かないかもしれませんし、ランキング競争の緊張感は、のんびり遊びたいプレイヤーにとってはストレスになることもあります。

「面白いゲームを作る」という言葉は一見シンプルですが、「誰にとっての面白さか」を問わないまま進んでいくと、ターゲットのないマーケティングと同じ状況に陥ります。誰かに深く刺さるより前に、誰にも届かないまま終わってしまうリスクがあります。

売れるゲームの条件

面白さが「体験の質」に関わるものだとすれば、「売れる」ことは「市場との接続」に関わります。どれだけ精巧な体験設計がされていても、それがユーザーに届かなければ商業的な成功は生まれません。売れるゲームには、面白さとは独立した条件があります。

市場分析とターゲット設定

売れるゲームを作る出発点は、「市場を知る」ことです。どんなジャンルが伸びているか、競合タイトルはどんなユーザー層を獲得しているか、どの価格帯が受け入れられやすいか。こうしたデータをもとに、自分たちの製品がどこに位置づけられるかを明確にする必要があります。

ゲーム市場は年々細分化が進んでいます。スマートフォンゲーム、PC・コンソールゲーム、インディーゲーム、サブスクリプション型と、プレイスタイルも課金モデルも多様化している今、「ゲームを遊ぶ人」という大きな括りでターゲットを考える時代はとうに終わっています。

「誰に届けるか」を明確にしないまま開発を進めることは、マーケティングの観点からは大きなリスクです。ターゲットが明確であれば、必要な機能や体験の優先順位が定まり、プロモーションのメッセージも研ぎ澄まされます。逆にターゲットが曖昧なままでは、リソースが分散して誰にも刺さらない中途半端な製品になりかねません。

プロモーション戦略

優れたゲームが実際に売れるためには、「知ってもらう」「興味を持ってもらう」「購入・ダウンロードしてもらう」という段階を設計的に踏む必要があります。マーケティングファネルの考え方そのものです。

近年重要性が増しているのが、インフルエンサーやコミュニティを活用した口コミ戦略です。広範なマス広告よりも、特定のゲーマーコミュニティに深く刺さるコンテンツのほうが、獲得コストを抑えながら熱量の高いユーザーを集めやすい傾向があります。

リリース前のティザー展開や、βテストによる期待値のコントロールも、ヒット作が意識的に取り入れているプロモーション施策です。「体験してもらう前に欲しいと思わせる」ことが、初動の販売数を大きく左右します。どれほど面白いゲームであっても、発売直後の注目度が低ければ市場に埋もれてしまう現実があります。

配信映え(Watchability)という第3の条件

「面白い」と「売れる」のギャップを語るうえで、近年見逃せない要素が配信映え(Watchability)です。

かつてゲームの購買動機は「自分で遊んで面白そうかどうか」がほぼすべてでした。しかしYouTubeやTwitchをはじめとするゲーム配信・実況文化が定着した現代では、「人が遊んでいるのを見て面白い、だから自分も買いたくなる」という購買経路が確立されています。これはゲームの面白さとは独立した、「観るコンテンツとしての価値」という側面があります。

実際、リアクションが生まれやすいホラーゲームや、予測不能な展開が続くサバイバル系ゲームは、プレイ体験そのものの評価以上に大きなセールスを記録することがあります。逆に、じっくり遊ぶと深い面白さがあるゲームでも、配信で映えにくければその魅力が広まりにくいという現実もあります。

売れるゲームを設計するにあたっては、「プレイヤーが体験する面白さ」に加えて「視聴者が画面越しに感じる面白さ」を意識することが、現代のマーケティング戦略において欠かせない視点になっています。

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ヒット作に共通する要素

面白くて、売れて、さらに長く愛されるゲーム。そうしたヒット作には、市場を横断してもいくつかの共通点が浮かび上がってきます。

差別化ポイント

ヒット作の多くは、他のゲームとの明確な違いを持っています。これは単なる奇抜さではなく、既存の市場に対して「これまでにない体験」あるいは「これまで以上の体験」を提供しているという意味での差別化です。

オープンワールドゲームが一般化する以前に広大な探索体験を提供したタイトル、バトルロイヤルというジャンルが確立される前に市場に打って出たタイトル。どちらも、トレンドを追うのではなく「次のトレンドを作る」判断があったからこそ、強烈な差別化を生み出せました。

差別化ポイントは、プロモーションにも直結します。「このゲームは何が違うのか」を一言で語れる製品は、ユーザーの記憶に残りやすく、口コミでも自然に広がります。企画段階からその言語化を試みることが、ヒットへの第一歩になります。

継続運営とブランド力

現代のゲーム市場において、リリースはゴールではなくスタートです。とりわけスマートフォンゲームやライブサービス型のゲームでは、リリース後の継続運営がタイトルの寿命と売上を大きく左右します。

定期的なアップデートやイベント、コラボレーションによってプレイヤーの熱量を維持し続けること。これは単なるコンテンツ追加ではなく、「このゲームが今も盛り上がっている」というシグナルを市場に送り続けるマーケティング行為でもあります。

長期運営の積み重ねから生まれるのがブランド力です。シリーズへの信頼、コミュニティの熱狂、メディア露出の蓄積。それらが次回作のリリース時に一気に動き出します。「売れ続けるゲーム」を作るためには、リリース後の設計をあらかじめ組み込んでおく視点が求められます。

企画職に求められる視点

ゲーム企画職は、クリエイティブな発想力と同時にビジネスとしての視野も求められる職種です。「面白いゲームを作りたい」という情熱は大前提ですが、それだけでは市場で戦えません。

数字と感性の両立

企画職に求められるのは、プレイヤーの感情を揺さぶる「感性」と、市場データやKPIを読み解く「論理」。この両極にある視点を、状況に応じて自在に行き来できる人材こそ、現場では高く評価されます。

新機能を追加するかどうかを判断する場面を想像してみてください。「なんとなく面白そうだから」ではなく、「ユーザー行動データを見ると特定の層の離脱率が高い。この体験を追加することで定着率の改善が期待できる」という形で語れるかどうか。感性だけでも、数字だけでも、その判断は片手落ちになります。

DAU(デイリーアクティブユーザー)やリテンション率、課金率といった指標を読み解きながら、「では次にプレイヤーへ届けるべき体験は何か」というクリエイティブな問いに答えていく。それが現代の企画職に求められる姿です。

マーケティング理解の重要性

企画職がマーケティングを理解することは、ゲームの品質を高めるだけでなく、プロジェクト全体の方向性を正しく定めることに直結します。「誰のために作るか」「何を差別化ポイントにするか」「どうやって届けるか」。これらはマーケティングの問いであると同時に、企画の根幹でもあります。

市場視点を持つ企画者は、開発途中での方向転換を最小限に抑え、チーム全体が共通のゴールへ向かって動ける設計ができます。プロモーションチームやビジネスサイドとの連携もスムーズになり、ゲームが「作られて終わり」ではなく「届けられて初めて完成する」という感覚を持ちながら開発に臨めます。

ヒットは偶然ではなく設計です。面白さを定義し、ターゲットを明確にし、差別化ポイントを言語化し、届ける仕組みを作る。この一連のプロセスを意識できる企画者こそが、ゲーム市場で結果を出し続けます。市場視点を持つことが、他の企画者との差を生む最大の武器になるでしょう。

ヒット作の寿命を左右するのは、リリース後のコミュニティ動向です。どんな戦略が流行し、環境がどう変化していくのか。いわゆる「メタ」の変遷を先読みした設計思想が、現代の運営には欠かせません。市場を動かすための次のステップとして、プレイヤー心理の核心に迫る「メタゲーム」の構造を理解しておきましょう。

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まとめ

「面白いゲーム」と「売れるゲーム」は、同じようで異なる概念です。面白さはプレイヤーの体験設計と心理への理解から生まれ、売れることは市場分析・ターゲット設定・プロモーション戦略によって実現されます。そして現代においては、配信映え(Watchability)という第3の条件が、両者のギャップを埋める重要な要素として加わっています。

ヒット作はこれらすべてを高い水準で実現しており、明確な差別化ポイントを持ち、継続運営によってブランドを育て、コミュニティ内のメタの変化にも柔軟に対応し続けます。

企画職を目指す人、すでに現場にいる人にとって、マーケティング視点は「苦手分野」として避けるものではありません。自分のクリエイティビティをより多くの人に届けるための、強力な武器です。感性を磨きながら数字と市場を読む力を育てること。それが、長くゲーム業界で活躍し続けるための確かな道筋になるはずです。

「知る」の次は「動く」へ。あなたのスキルを活かす戦略を、一緒に練りませんか?