「縁の下の力持ち」ゲーム開発の意外な職種 9選|ゲーム・IT業界に強い人材会社|株式会社STAND|スタキャリテック

1. QAテスター【品質の守護者】
役割と重要性
Quality Assurance(品質保証)、略してQAテスターは、ゲームの品質を保証するために不具合を見つけ出し、報告する役割を担います。
ユーザー体験を損なう可能性のあるバグやシステムの問題点を開発の早い段階で発見することで、製品の品質向上に貢献します。
具体的な業務内容
テストケースの作成と実行
バグの発見、再現、文書化
ゲームバランスやユーザビリティの検証
パフォーマンステスト(負荷テストなど)
ローカライゼーション品質の確認
必要なスキルと素質
細部への注意力
論理的思考能力
正確な文書作成能力
忍耐力と集中力
ゲームメカニクスへの理解
QAは単にゲームをプレイするだけの楽な仕事ではなく、同じシーンを何度も繰り返し、細かい条件を変えながら検証する地道な作業です。
しかし、優れたQAチームの存在は、ゲームの完成度を大きく左右します。
業界の実情とキャリアパス
QAテスターは多くの場合、ゲーム業界へのエントリーポジションとして機能しています。
実際に多くのゲーム人材がQAテスターとしてキャリアをスタートさせています。
ゲーム開発の全体像を理解し、様々な問題に触れられるため、将来的に他の職種へとキャリアチェンジするための貴重な経験を積むことができます。
ただし他職種(主にプランナー)になる際は、QA業務と並行して他職種の業務を行ったり、その申し出を受ける、または提案する理由とするためにQA業務で高評価を受ける必要があります。
さらに、プランナーに転向する際には、論理的思考やそれを伝えるコミュニケーション能力が重視されるため、QAからの転向を考えている場合はそういった部分についてもしっかりと戦略を立てて行動に移しましょう。
また、QAの観点と他職種の観点はかなり異なる場合もあるため、柔軟な思考力と許容力を培うと良いかも知れません。
2. サウンドデザイナー【聴覚体験の創造者】
役割と重要性
ゲーム体験において、音楽や効果音は視覚的要素と同等かそれ以上に重要なことがあります。
サウンドデザイナーや作曲家は、ゲームの世界観や感情表現を音で表現し、プレイヤーの没入感を高める役割を担っています。
具体的な業務内容
ゲーム音楽の作曲
効果音(SE)の制作
音声収録とディレクション
環境音の設計
オーディオプログラミングやミキシング
必要なスキルと素質
音楽理論の知識
DAW(Digital Audio Workstation)の操作技術
音響工学の基礎知識
ゲームエンジンのオーディオシステムへの理解
音楽を通した感情表現能力
現代ゲームにおける音響技術の進化
近年のゲームでは、単なるBGMだけでなく、適応型音楽(Adaptive Music)と呼ばれる、プレイヤーの行動やゲーム状況に応じて動的に変化する音楽システムが採用されるようになっています。
また、3Dオーディオ技術の発展により、よりリアルな空間音響表現が可能になり、VRゲームなどでの没入感向上に貢献しています。
こうした技術の進化により、サウンドデザイナーには従来の音楽知識に加えて、プログラミングやゲームエンジンへの理解も求められるようになってきています。
また、ゲーム開発の現場では、ボイス収録が別軸であり、大抵シナリオライターとプランナーがセットで収録に参加することが多いです。サウンドデザイナーとして、関連業務にも携われると、業界で重宝される人材になれる可能性があります。
3. ローカライズ【国境を越える翻訳者】
役割と重要性
グローバル市場でのゲーム展開において、単なる翻訳を超えたローカライゼーションの質は非常に重要です。
ローカライゼーション専門家は、言語だけでなく文化的な要素も考慮し、各国のプレイヤーが自然に楽しめるゲーム体験を創出します。
具体的な業務内容
ゲームテキストの翻訳
文化的な文脈の適応
音声収録の監修(吹き替え)
規制対応(各国のレーティングシステムへの適合)
ローカライズQAとフィードバック収集
必要なスキルと素質
高度な語学力
異文化への深い理解
ゲーム業界の知識
クリエイティブライティング能力
プロジェクト管理スキル
文化的考慮とローカライゼーションの課題
優れたローカライゼーションとは、単なる直訳ではなく、現地の文化やプレイヤーの感性に合わせた“文化的翻案”です。
たとえば、ジョークや言葉遊び、映画やアニメのオマージュなどは、直訳では意味が伝わりにくいため、その国の文脈や感覚に合った表現に置き換えることが求められます。
また、国や地域によっては、宗教・政治・ジェンダーなどに関する規制や文化的タブーも異なります。
そうした背景を踏まえてコンテンツを調整する判断力と、コンテンツの本質を損なわない工夫が、高品質なローカライズには不可欠です。
さらに、ローカライズの対象は日本から海外、海外から日本の両方向に広がっています。
海外ゲームの日本展開も活発化しており、日本語ユーザーは翻訳の品質に敏感なため、単なる翻訳ではなく、UXや文脈の違いに配慮した“体験として自然なローカライズ”が求められます。
このような高度な対応には、言語スキルに加えて、ゲームへの理解、プレイヤー目線での判断力も不可欠です。
一方で、国内ゲーム市場は全体として成長の鈍化が見られ、ローカライズ業務のみでのキャリア形成が難しくなる局面も増えています。
そのため、翻訳スキルに加え、プランナーやUXディレクションなど、企画面の能力をかけ合わせた“多軸型のキャリア”を構築することが、今後ますます重要になっていくでしょう。
4. テクニカルアーティスト【アートと技術の架け橋】
役割と重要性
テクニカルアーティストは、アートチームとエンジニアチームの間に立ち、両者のコミュニケーションを円滑にする「通訳者」のような役割を果たします。
アーティストの創造的なビジョンを技術的に実現可能な形に落とし込み、ゲームエンジン上で最適に動作するようサポートします。
具体的な業務内容
アセットパイプラインの構築と最適化
シェーダー開発
リギングやアニメーションシステムの構築
テクニカルアート関連のツール開発
アーティストへの技術的サポートと教育
必要なスキルと素質
プログラミング知識(特にシェーダー言語)
3DCGソフトの高度な操作技術
ゲームエンジンへの深い理解
問題解決能力
コミュニケーション能力
最新グラフィック技術とテクニカルアートの進化
近年のリアルタイムレイトレーシングやプロシージャル技術の進化により、テクニカルアーティストの役割はますます重要になっています。
例えば、オープンワールドゲームでの広大な自然環境生成や、キャラクターの髪や布の物理シミュレーションなど、高度なビジュアル表現を実現するためには、アート的センスと技術的知識の両方を持ち合わせた人材が不可欠です。
また、クロスプラットフォーム開発が一般的になる中で、様々なハードウェア環境に最適化されたグラフィックパイプラインを構築する能力も求められています。
アートとエンジニアの知識、どちらも必要な領域となり、実際に活躍する人材は自身でもアートの仕事ができるエンジニア(またはプログラミングも勉強したアーティスト)であることが多く、現場で働く上での障害が肌感覚でわかることが重要です。
もし、自身のキャリアとしてこの道を考えている場合は、問題解決能力や、傾聴スキルを身に付け、その時々で価値を産み出せるように備えておきましょう。
もちろん、高度な分野になるため技術的な研鑽を怠ることはできない点にも注意しましょう。
5. KPI分析・ユーザーリサーチャー【データで語るプレイヤーの代弁者】
役割と重要性
ユーザーリサーチャーは、実際のプレイヤーの行動や心理を科学的に分析し、開発チームに客観的なフィードバックを提供します。
感覚や経験だけでなく、データに基づいた意思決定をサポートすることで、より多くのプレイヤーに訴求するゲーム設計に貢献します。
具体的な業務内容
ユーザビリティテストの設計と実施
プレイテスト結果の分析と報告
アンケート調査やインタビューの実施
ゲーム内データ(プレイログ)の分析
プレイヤー心理のモデル化と提案
必要なスキルと素質
統計学や心理学の知識
データ分析スキル
研究設計能力
コミュニケーション能力
客観的な視点
データドリブン開発の潮流
特にモバイルゲームや大規模オンラインゲームの分野では、膨大なプレイデータを収集・分析し、継続的に改善していく「データドリブン開発」が主流になっています。
分析チームはこうした開発アプローチにおいて中心的な役割を担い、プレイヤーの行動パターンや離脱ポイントを特定することで、ゲーム体験の改善に貢献しています。
また、A/Bテストのような実験的アプローチを設計・分析することで、新機能や変更の効果を客観的に評価する役割も果たしています。
比較的規模が小さい開発チームでは、分析・リサーチをプランナーやプロモチームなどが協力して対処している場合が多く、分析単体の案件自体はかなり少ない状態となっております。
そのため、プランナーが身に付けるスキルの候補とすることでキャリアを築いていくのも良いかもしれません。
6.プロモーション・ コミュニティマネージャー【プレイヤーコミュニティの育成者】
役割と重要性
プロモーション・コミュニティマネージャーは、ゲームを取り巻くプレイヤーコミュニティと開発チームをつなぐ橋渡し役です。
特にライブサービスゲームやオンラインゲームにおいて、健全で活発なコミュニティの形成はゲームの長期的な成功に不可欠であり、その中心的な役割を担います。
具体的な業務内容
SNSやフォーラムの運営・モデレーション
プレイヤーフィードバックの収集と開発チームへの伝達
コミュニティイベントの企画・運営
公式コンテンツ(ブログ、動画など)の制作
危機対応とコミュニケーション戦略立案
必要なスキルと素質
優れたコミュニケーション能力
SNSマーケティングの知識
コンフリクト解決能力
ゲームへの深い理解
感情インテリジェンス
デジタルコミュニティの進化とその重要性
特にeスポーツタイトルや長期運営のMMOでは、プレイヤーコミュニティが独自の文化を形成し、ゲーム自体の魅力を拡張する役割を果たしています。
こうしたコミュニティを健全に育てることは、ゲームの寿命を延ばし、プレイヤーのロイヤルティを高めることにつながります。
最近では、Discord、Reddit、YouTubeなど多様なプラットフォームでのコミュニティ運営が求められるようになり、各プラットフォームの特性を理解した上での戦略的なコミュニケーション設計が重要になっています。
基本的にプロモチームとして扱われることが多く、他社との連携が必要な場面が多くあります。
特に、ライブ配信やプロモ用の音声素材の収録などは、多くの人間が関わるため、ビジネススキルを求められます。
7. ナラティブデザイナー【物語の紡ぎ手】
役割と重要性
ナラティブデザイナーは、ゲームにおけるストーリーやキャラクター、世界観などの物語要素を設計する専門家です。
単なるシナリオライターとは異なり、ゲームプレイと物語を融合させ、インタラクティブな体験として物語を伝える手法を開発します。
具体的な業務内容
ストーリーとキャラクターの設計
ダイアログ(会話)の執筆
分岐シナリオの構築
ナラティブ要素とゲームプレイの統合
世界観・設定の構築と管理
必要なスキルと素質
物語構築力
キャラクター設計能力
ゲームデザインの理解
非線形ナラティブの設計能力
コラボレーション能力
インタラクティブストーリーテリングの進化
近年のAAAタイトルでは、プレイヤーの選択によって変化する複雑な分岐シナリオや、環境ストーリーテリング(Environmental Storytelling)と呼ばれる、ゲーム世界のオブジェクトや環境を通して物語を伝える手法が発展しています。
こうした進化によって、ナラティブデザイナーには従来の物語構築能力に加えて、ゲームの相互作用性を活かした新しい物語表現の開発が求められるようになっています。
例えば『Detroit: Become Human』のような選択肢の影響が複雑に絡み合うゲームでは、膨大な分岐パターンを管理しながら一貫した物語体験を提供する能力が必要とされます。
通常のシナリオライティングに近いですが、よりゲームの仕様に詳しい必要があります。
セリフやフレーバーテキストのみだけでなく、背景やプロップなどから考察できるよう余白を作るなど、繊細で細かい作業が多く発生します。
ゲームの完成度を高める非常に重要なポジションとなりますが、ナラティブという概念自体がまだ浸透しきっておらず、特にソシャゲでは表現が難しいこともあり、希少な職種となっています。
8. AI分野【デジタル知性の開発者】
役割と重要性
ゲームにおけるAIは、NPCの行動パターンや敵キャラクターの知性を設計し、プレイヤーに対して挑戦的かつ自然に感じられる対戦相手や仲間を創出します。
また、プロシージャル生成やダイナミックな難易度調整など、AI技術を活用したゲーム体験の向上にも貢献します。
具体的な業務内容
キャラクターAIの設計と実装
行動ツリーや意思決定システムの構築
機械学習モデルの開発と統合
プロシージャルコンテンツ生成の設計
AIを活用したゲームデザインの研究
必要なスキルと素質
AI/機械学習の専門知識
プログラミングスキル
ゲームデザインへの理解
問題解決能力
創造的思考力
最新AI技術のゲーム応用
近年の機械学習技術の進歩により、従来の規則ベースAIだけでなく、より高度な学習型AIをゲームに組み込むことが可能になっています。
例えば、『F1 2023』のようなレースゲームでは、プレイヤーの運転スタイルを学習して適応するAIドライバーが実装されています。
また、『No Man's Sky』のようなプロシージャル生成を活用したゲームでは、AIアルゴリズムによって膨大な数の惑星や生物が自動生成され、探索要素を豊かにしています。
さらに、最新の研究では、AIを活用したダイナミックなストーリー生成や、プレイヤーの好みに合わせたコンテンツの生成なども進められています。
9. 法務・知的財産(IP)専門家【創造物の保護者】
役割と重要性
ゲーム業界では、オリジナルIPの保護や他者の権利侵害防止、各国の法規制への対応など、複雑な法的課題が存在します。
法務・IP専門家は、こうした法的リスクから開発チームを守り、創造的な活動に安心して取り組める環境を整える役割を担います。
具体的な業務内容
著作権や商標の管理
ライセンス契約の交渉と管理
各国のゲーム規制への対応
プライバシーポリシーやEULAの策定
法的リスク評価と対策立案
必要なスキルと素質
法律知識(特にIP法、契約法)
国際法への理解
交渉能力
ゲーム業界の事業理解
リスク分析能力
グローバル展開における法的課題
グローバルにゲームを展開する際には、各国・地域特有の法規制や文化的規範に対応する必要があります。
例えば、ルートボックス(ガチャ)に関する規制はベルギーとオランダで特に厳しく、中国では内容審査やデータローカライゼーションの要件があるなど、地域ごとに異なる対応が求められます。
また、有名IPを活用したゲーム開発や、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を含むゲームでは、複雑な権利関係の整理が必要になります。
法務・IP専門家は、こうした複雑な状況を整理し、適切な対応策を提案することで、ビジネスリスクを最小化します。
まとめ
本記事で紹介した9の職種は、プランナー、エンジニア、デザイナーとともに、現代のゲーム開発を支える重要な役割を担っています。
ゲーム産業の成熟と複雑化に伴い、こうした専門職の重要性は今後もさらに高まっていくでしょう。
これらの「縁の下の力持ち」的職種について知ることは、ゲーム業界を目指す方々にとって、より広いキャリアの選択肢を考える一助になるはずです。
また、ゲームファンにとっても、お気に入りのゲームがどのような多様な専門家たちによって支えられているかを理解することで、ゲームへの新たな視点や理解が得られるでしょう。
ゲーム開発は、技術と芸術とビジネスが融合した複雑な創造活動です。その複雑さゆえに、様々な専門性を持った人材が協力し合うことで、初めて素晴らしいゲーム体験が生まれるのです。
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