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ゲームタイトルの需要と供給のバランスとは|ゲーム・IT業界に強い人材会社|株式会社STAND|スタキャリテック

かつて「娯楽の一形態」として扱われていたゲームは、いまや世界的なエンターテインメント産業の中核を担う存在へと成長しました。日本国内においても、モバイルゲームの普及やeスポーツ市場の拡大、生成AIやクラウド技術の進化などを背景に、業界全体が急速な変化を遂げています。一方で、開発費の高騰や人材不足、パブリッシャーと開発スタジオの力関係の変化など、課題も複雑化しています。 本記事では、ゲーム業界の現在地を把握するとともに、今後の市場展望、技術革新の影響、求められる人材像などを多角的に分析し、変化の時代を生き抜くための視座を提供します。
目次

※この記事の読了時間は約10分です。

ゲーム業界の現状と今後の展望

ゲーム産業は過去数十年で小さな娯楽市場から巨大なエンターテイメント産業へと進化してきました。
2024年現在、世界のゲーム市場は約2,442億ドル規模に達し、映画やスポーツなど他のエンターテイメント産業を凌駕する存在となっています。
スマートフォンの普及とともにモバイルゲームが急成長し、クラウドゲーミングやVR/AR技術の進歩など、技術革新によってゲーム体験の可能性は無限に広がりつつあります。
さらに、eスポーツの台頭や、ゲームのコミュニティ形成機能の強化により、単なる「遊び」を超えた社会的・文化的影響力を持つようになりました。コロナ禍を経て、人々のデジタルエンターテイメントへの需要は一層高まり、ゲーム業界はその恩恵を受けながらも、同時に変化する消費者ニーズに応える必要性に直面しています。

現在のゲーム市場の規模と動向

市場規模の拡大

現在のゲーム市場は、モバイル、コンソール、PC、クラウドゲーミングなど多様なプラットフォームにわたって成長を続けており、特にモバイルゲーム市場は全体の約50%を占め、最も大きなセグメントとなっています。
アジア太平洋地域が最大の市場シェアを持ち、特に中国とインドの成長は目覚ましいものがあります。
一方で北米と欧州も依然として重要市場であることは変わらず、ラテンアメリカやアフリカなどの新興市場も急速に拡大しています。

デジタル販売の主流化

物理的なゲームソフトの販売からデジタルダウンロード販売へのシフトは、既に不可逆的なトレンドとなっています。
主要コンソールメーカーやPCプラットフォームのデジタルストアでの売上が年々増加し、特にコロナ禍以降はその傾向が顕著になりました。
これにより、流通コストの削減やグローバルな同時発売が容易になる一方で、中古市場の縮小や地域間の価格差の問題なども生じています。
中古市場の影響はユーザー体験にも紐づき、ゲームを体験する機会そのものが奪われてしまう危険性は十分にあると言えるでしょう。ただ、販売側としては利益にならない市場ということもあり、今後どういったバランスになるか注目しておく必要があります。

サブスクリプションモデルの台頭

Xbox Game Pass、PlayStation Plus、Nintendo Switch Onlineなどのサブスクリプションサービスは、ゲーム業界のビジネスモデルに革命をもたらしています。
月額定額で多数のゲームにアクセスできる「ゲームのNetflix」モデルは消費者から高い支持を得ており、特に中小規模の開発者にとっては安定した収入源となる可能性を秘めてる一方で、従来の買い切り型ビジネスモデルとの共存や、開発費の回収方法など、新たな課題などが次々と生まれています。
また、プラットフォームが固定されることで、より上位者の意思に沿う必要性が上がり、画期的なアイディアを実践することや自由を担保することが困難になる可能性もはらむことになります。

「基本プレイ無料」が持つ、それぞれの自由と公平性のバランス

「基本プレイ無料」でアイテム課金などで収益を上げるフリーミアムモデルは、特に「原神」などのモバイルゲーム市場で主流となっており、オンラインゲームでも「Fortnite」など、このモデルで大成功を収めたタイトルも少なくありません(挙げたタイトルはごく一部かつ比較的新しいタイトルであり、十数年前から現在まで同じモデルが使用され続けています)。
しかし、一部のゲームでは過度な課金要素が批判を浴び、各国で規制の動きが実際に起こりました。
日本でも例外ではなく、意図的にしろ気が付かなかったにせよ、開発・運用元が輩出率を操作してしまい多額の課金が発生してしまうなどで指導が入るなど大きな事件にまで発展するケースがありました。
そうした背景もあり、開発者の自由(特に収益性)と公平性などのバランスを今も模索し続けているのです。

今後のゲーム開発におけるトレンド

AI技術の活用

人工知能(AI)技術はゲーム開発のあらゆる面で革新をもたらしつつあります。
NPCの行動をより自然かつ複雑にする強化学習、プレイヤーの行動パターンに基づいて難易度を自動調整するアダプティブAI、さらには生成AIを用いたコンテンツ制作の効率化など、その活用範囲は広がる一方です。
特に中小規模の開発スタジオにとって、AIはリソース不足を補う強力なツールとなる可能性を秘めています。
しかし、依然として著作権の侵害やハルシネーション、同じものを一定のクオリティで出し続ける困難さなど問題点はいまだ解決できておらず、高度な画像処理などの補助として使用できる方策などのみが実用化されています。
これらの問題が解決されると、かねてより問題だった開発コストの肥大化を解消できる可能性があるといえるでしょう。

クロスプラットフォーム化の進展

PlayStation、Xbox、Nintendo Switch、PC、モバイルなど、異なるプラットフォーム間でのプレイを可能にするクロスプラットフォーム機能は、もはや特別な機能ではなく、多くのプレイヤーが当然のように期待する標準機能になりつつあります。
「Fortnite」や「Minecraft」などの成功例に続き、ハードウェアの壁を超えたプレイ体験を提供するゲームが増加しています。
技術的な障壁よりも、プラットフォーム間の商業的利害関係が最大の課題となっていますが、プレイヤーの強い要望を受けて、徐々に解消されつつあります。

メタバースとの融合

「メタバース」という概念がテクノロジー業界のバズワードから実用的なプラットフォームへと進化するにつれ、ゲームはその中核的な要素となりつつあります。
「Roblox」や「Fortnite」などは単なるゲームを超えて、コンサート、映画上映、ブランドとのコラボレーションなど、様々な体験を提供する仮想空間へと発展しています。
今後はより高度なVR/AR技術との融合により、物理的な世界とデジタル世界の境界を曖昧にするような没入型体験が増えていくでしょう。

ゲームタイトルの需要と供給のバランス

人気ゲームタイトルの需要分析

現在のゲーム市場において、需要が特に高いジャンルやタイトルの特徴を分析することは、開発戦略を立てる上で必要不可欠です。ここ数年のトレンドを見ると、以下のような特徴を持つゲームが高い需要を集めています。
オープンワールドRPG
「The Elder Scrolls」シリーズや「The Witcher 3」、「Elden Ring」などに代表される広大な世界を自由に探索できるRPGは、プレイヤーに高い自由度と没入感を提供するため、根強い人気を誇っています。
特に、選択肢によってストーリーが分岐するナラティブ要素や、プレイヤーの行動が世界に影響を与えるシステムなど、個々のプレイ体験をユニークなものにする要素が重視されています。
また探索要素の豊富さもユーザーにとって重要となっており、どこまで拡充するか、またその探索の整合性や難易度の調整など、いわゆるレベルデザインが品質を左右する要素となっております。
さらに、データ読み込みのタイミングや、シームレスな場面転換など、オープンワールドだからこそ高い技術力を魅せることが可能であり、コアなユーザー層はそういった細かい部分も注目することが多いです。総合力が試されるジャンルと言えるでしょう。
ライブサービスゲーム
「Fortnite」や「Apex Legends」などのバトルロイヤルゲーム、「Destiny 2」などのオンラインRPGに代表される、定期的なアップデートやシーズン制を採用したライブサービスゲームは、プレイヤーの長期的なエンゲージメントを獲得することに成功しています。
常に新鮮なコンテンツが追加されるモデルは、プレイヤーの継続的な関心を維持し、結果として安定した収益源となっています。ただし、継続させる=飽きさせない工夫は開発者を悩ませる種です。
例えば、ユーザー本人が技術的に介入できる「スキルゲーム」では調整が非常にシビアとなり、たった一回のアップデート(調整)でユーザーが多く離脱してしまうこともあります。かといって調整しない、という選択はユーザーの飽きを加速させるため、バランス調整はどの企業も非常に慎重に行っています。
インディーゲーム
大手スタジオによる大規模タイトルだけでなく、「Hades」「Stardew Valley」「Among Us」などのインディーゲームも商業的・批評的に大きな成功を収めています。
独創的なゲームデザイン、アートスタイル、ストーリーテリングなど、大手スタジオが手がけにくい革新的な要素に焦点を当てたタイトルが、特定のニッチ市場で高い需要を獲得しています。
また開発コストの面で見ても、開発者個人個人の工夫が光ります。
人的資源、金銭的資源どちらも大手スタジオよりも限られる中、取捨選択をし、ユーザー体験を最大化させることに心血を注ぐことで、結果的にユーザーの支持を得れれることもあります。
開発コストのハンデを、思考を凝らして乗り越える姿勢が顕著なのがこのジャンルの特徴とも言えるでしょう。

需要に応じたジャンルの重要性

市場の需要を正確に把握し、それに応じたジャンルにてプロジェクトを企画・開発することは、ビジネスの成功への近道です。
しかし、単に現在の人気ジャンルを模倣するだけでは、激しい競争の中で埋もれてしまう可能性が高いです。
人気なジャンルということは、多くのプロジェクトが乱立しているということであり、アイデアは他の誰かも思いついていることが多いためです。
そのため、ジャンルの需要に応じた企画の重要なポイントをいくつか挙げましょう。

ターゲットオーディエンスの明確化

「すべての人に向けたゲーム」を目指すよりも、特定のターゲット層に焦点を絞った企画が成功しやすい傾向にあります。言い換えると、ターゲットを絞らなければ、限られた人手や時間、お金が無駄に使われてしまう、ということになります。
例えば、コアゲーマー向けの高難度アクションゲーム、カジュアルユーザー向けのシンプルなパズルゲーム、特定の年齢層や性別に訴求するキャラクターデザインなど、明確なターゲティングによって効果的なマーケティングと開発リソースの集中が可能になります。
大人気ゲームはカバーしている範囲も当然広いですが、それはメインターゲットを分解し、個別なアプローチをすることで結果的に幅広く対応しているのです。間違っても、「すべての人に向けたゲーム」という漠然としたものを目指しているわけではありません。

差別化要素の確立

市場に既に溢れている類似タイトルとの差別化は必要不可欠です。
独自のゲームメカニクス、革新的なアートスタイル、印象的なストーリーテリング、あるいは特定のIPやライセンスの活用など、プレイヤーが「このゲームだけにしかない体験」を感じられる要素を持つことが重要です。「Hollow Knight」のような手描きのアート、「Disco Elysium」のような革新的な会話システムなど、一点突破型の差別化も効果的です。
また、現在のゲーム開発では、市場調査データやプレイヤーのフィードバック、さらにはアーリーアクセスやベータテストで得られるプレイデータなど、様々なデータに基づいた意思決定が可能になっています。
「何となく面白そう」という直感だけでなく、実際のデータに基づいてゲームデザインを調整することで、市場の需要により適切に応えることができ、差別化した要素が本当に差別化されているのかなどを詳細に分析することができます。

供給不足とその影響

市場の需要に対して供給が追いつかない状況は、ゲーム業界でも様々な形で発生しています。
これには技術的、人的、あるいは商業的な要因があり、それぞれが市場にさまざまな影響を与えています。
ハードウェア供給の制約
PlayStation 5やXbox Series X、高性能グラフィックカードなどのハードウェア不足は、チップ供給の世界的制約やコロナ禍のサプライチェーン混乱などにより、発売から数年経っても完全には解消されていません。
これにより、次世代機向けタイトルの販売機会が制限され、クロスジェネレーション開発(旧世代機と新世代機の両方に対応したゲーム開発)が長期化する傾向があります。
開発リソースの限界
ゲーム開発の大規模化・複雑化に伴い、一つのAAAタイトルの開発に数百人規模のチームと数年の期間が必要になっています。
この結果、大手スタジオでも年間に発売できるタイトル数は限られており、需要の高いIPやシリーズの新作が何年も出ないという状況が生じやすくなっています。
「The Elder Scrolls VI」や「Grand Theft Auto VI」など、前作から長い年月が経過しているにもかかわらず、依然として開発中のタイトルも少なくありません。
ニッチ市場のタイトル不足
主流のジャンルやプラットフォームには多くのタイトルが供給される一方で、特定のニッチ市場では依然として供給が需要に追いついていないケースがあります。
例えば、高品質な和製RPG、本格的な戦略シミュレーション、VR向けの大規模タイトルなど、一定の熱心なファン層が存在するにも関わらず、開発リスクの高さから十分なタイトルが供給されていない領域も存在します。
供給不足がもたらす市場への影響
供給不足は、短期的には既存タイトルの長寿命化やプレミアム価格での取引などの現象を引き起こします。
例えば、新作が少ないジャンルでは過去の名作が高い価格で取引されたり、リマスター版やリメイク版が数多く発売されたりする傾向があります。
また、供給不足のニッチを狙ったインディーデベロッパーが成功するチャンスも生まれます。
「Stardew Valley」が「Harvest Moon」シリーズのようなファーミングシミュレーションの新作不足を補い大ヒットしたケースなどが好例です。

持続可能な市場バランスに向けて

ゲーム産業の健全な発展のためには、需要と供給のバランスを適切に保つことが重要です。
開発者やパブリッシャーは市場のニーズを的確に捉えつつも、単なるトレンドの追従ではなく、革新的な要素を取り入れたタイトル開発に挑戦し続ける必要があります。
同時に、技術革新や開発効率の向上により、より多様なゲーム体験を効率的に提供できる環境を整えることも重要です。
プレイヤー側も、大手スタジオの話題作だけでなく、インディーゲームやニッチなジャンルのタイトルにも目を向けることで、市場の多様性を支える役割を果たすことができます。
多様なニーズと多様な供給が共存する健全なエコシステムの構築こそが、ゲーム産業の持続可能な成長の鍵となるでしょう。

まとめ

ゲーム業界は世界最大規模のエンタメ市場へと成長し、デジタル販売やサブスクリプションの普及がビジネスモデルを大きく変革しています。
AIやクロスプラットフォーム化、メタバースなど技術革新も進み、開発現場の在り方が多様化しています。
一方でヒット作の偏りや供給不足といった課題も顕在化しており、プレイヤーのニーズを的確に捉えることが今後の鍵となります。
市場競争が激化する中、柔軟な開発体制と継続的な価値提供が企業の成否を左右します。
今後も、変化を先取りし持続可能な成長戦略を描くことが業界の未来を左右するでしょう!

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