ノウハウ 2025.09.02

プロジェクトを成功に導く！企業が「指名したい」フリーランスの共通点

なぜ今、フリーランスの「質」が重要視されるのか？

近年、ゲーム・IT業界においてフリーランス活用は急速に拡大しています。経済産業省の調査によると、IT系フリーランス人口は年々増加傾向にあり、特にゲーム開発やWebサービス開発の分野では、プロジェクトベースでの専門人材活用が一般的になってきました。

この背景には、技術の多様化とプロジェクトの複雑化があります。従来の正社員による開発体制だけでは対応しきれない専門技術や、短期集中的なプロジェクトに対して、企業は柔軟な人材活用を求めています。しかし、ここで重要なのは、企業が求めているのは単なる「人手」ではないということです。

企業が真に求めているのは、プロジェクトに確実な成果をもたらす「即戦力」です。つまり、技術力だけでなく、プロジェクトマネジメント能力、コミュニケーション力、そして何よりも「責任感」を持ったプロフェッショナルなのです。

本記事では、数多くの企業とフリーランスをマッチングしてきた経験から、企業が「この人に任せたい」と思うフリーランスの共通点を明らかにします。これから独立を考えている方、すでにフリーランスとして活動しているが更なる市場価値向上を目指す方にとって、実践的なヒントとなる内容をお届けします。

スキルセットとキャリア形成：信頼を築くプロの歩み

一貫性のあるキャリアが信頼を生む

フリーランス選考において、企業が最初に注目するのがキャリアの一貫性です。頻繁な転職やブランク期間があることが、必ずしもマイナス要因になるわけではありませんが、それらがプロジェクト遂行能力への懸念に繋がる可能性があることは事実です。

企業が特に重視するのは以下の2つの要素です。

専門性の深さ：一つの分野を深く追求し、特定の技術やジャンルで確かな実績を積んでいることは、企業にとって大きな安心材料となります。例えば、Unityを使ったモバイルゲーム開発において5年以上の経験があり、リリースタイトル数が10本を超えるエンジニアは、同じ技術領域でのプロジェクトにおいて即戦力として期待されます。

技術トレンドが急速に変化するIT業界において、「広く浅く」よりも「狭く深く」の専門性が評価される傾向にあります。これは、プロジェクトの成功には、表面的な知識ではなく、実際の開発現場で起こりうる問題を予見し、解決できる経験値が必要だからです。

継続性への評価：長期的なプロジェクトへの参画経験や、複数の企業で安定してキャリアを築いている実績は、高い信頼性の証拠となります。特に、1年～3年以上の長期案件を複数経験している場合、企業は「この人は最後まで責任を持ってプロジェクトを完遂してくれる」という安心感を持ちます。

ゲーム開発のように、企画から運営まで長期間にわたるプロジェクトでは、途中で担当者が変わることによる品質低下やスケジュール遅延を避けたいという企業のニーズがあります。継続性のあるキャリアは、そのようなリスクを軽減する重要な要素として評価されるのです。

ブランク期間を「強み」に変える方法

キャリアにブランクがあることを気にする方は多いですが、重要なのはブランクがあること自体ではなく、その期間に何をしていたかを明確に説明できるかどうかです。むしろ、戦略的なブランク期間は、市場価値を高める投資として評価される場合もあります。

自主的な学習・開発活動：新しい技術の習得や個人プロジェクトの開発に時間を費やした経験は、向上心と自己投資能力の証明になります。例えば、AI・機械学習の分野で注目されているPythonやTensorFlowを集中的に学習し、実際にWebアプリケーションやデモンストレーション可能な成果物を作成した経験は、高く評価されます。

また、GitHubでのオープンソース活動や技術ブログでの情報発信など、学習成果を可視化できる活動は特に効果的です。これらの活動は、技術力向上だけでなく、継続的な学習意欲とアウトプット能力を示す指標として企業に評価されます。

海外経験・語学スキルの向上：グローバル化が進むゲーム・IT業界において、海外経験や語学スキルは大きなアドバンテージとなります。海外のゲーム会社でのインターンシップ経験や、海外のクライアントとの開発プロジェクト参画経験は、国際的な視野と異文化コミュニケーション能力の証明となります。

現在では多くの日本企業が海外展開を視野に入れており、英語でのドキュメント作成やミーティング参加ができる人材への需要が高まっています。TOEIC800点以上の語学力と実務での使用経験があれば、他の候補者と差別化できる重要な要素となるでしょう。

報酬と働き方：プロフェッショナルの交渉術

市場価値を正しく把握する

フリーランスとして成功するためには、自身のスキルと経験に見合った適正な報酬を設定することが重要です。しかし、ここで注意すべきは、報酬設定が単に「高ければ良い」というものではないということです。

相場感に基づいた合理的な報酬設定：企業が重視するのは、提示された報酬がそのフリーランスのスキルや実績に見合っているかという点です。市場相場を大幅に上回る報酬を要求することは、かえって「市場感覚が欠如している」というマイナス印象を与える可能性があります。

例えば、Unity開発経験3年のエンジニアが、経験10年のシニアエンジニア並みの報酬を要求した場合、企業は「自己評価が客観的でない」と判断し、採用を見送る可能性が高くなります。一方で、適切な相場感を持ち、自身の経験とスキルを正確に評価できる人材は、企業から「現実的で信頼できるパートナー」として評価されます。

価値提案の論理的な説明：重要なのは、なぜその報酬が妥当なのかを論理的に説明できることです。過去のプロジェクトでの具体的な成果、習得している技術の希少性、プロジェクトへの貢献度などを数値や事例で示すことで、報酬の妥当性を証明できます。

「ECサイトの検索機能を独自アルゴリズムで改善し、その結果月売上が20%向上した」「ユーザー行動分析に基づいてUI/UXを再設計・実装し、DAU（日次アクティブユーザー）が1.5倍に増加した」など、自分の具体的な貢献内容と定量的な成果をセットで示すことが重要です。企業は、単に良い結果があったプロジェクトに参加していたのか、それとも自分が主体的に成果を創出したのかを明確に判断したいと考えています。

柔軟な働き方と責任のバランス

フリーランスの魅力の一つは働き方の自由度ですが、現実的には多くの企業が出社やハイブリッド勤務を求めているのが実情です。完全リモートワークを希望する場合、選択肢が限られることを理解し、柔軟な対応力を示すことが重要です。

出社・ハイブリッド勤務への対応力：ゲーム・IT業界では、セキュリティ要件、チーム連携の重要性、機密情報の取り扱いなどの理由から、週3-4日の出社を求める企業が多数を占めています。「フルリモート希望」と限定してしまうと、優良案件の機会を大幅に減らすことになります。

優秀なフリーランスは、「プロジェクトの成功のためなら勤務形態は柔軟に対応する」という姿勢を持っています。出社が必要な場合でも前向きに受け入れ、むしろ「直接的なコミュニケーションでより良い成果を出せる」と捉える柔軟性が評価されます。

チーム連携への積極的参加：出社・リモートに関わらず、プロジェクトの成功には、個人の技術力だけでなく、チームとしての連携が重要です。定期的なミーティングへの参加、進捗報告の徹底、他のメンバーとのコミュニケーションを積極的に行う姿勢が求められます。

特に、アジャイル開発やスクラム開発が主流となっている現在、デイリースタンドアップやスプリントレビューなどのチームイベントへの参加は、プロジェクト成功の重要な要素となっています。対面でもオンラインでも、チームの一員としての責任を果たす姿勢が評価されます。

迅速な対応力とプロ意識：勤務形態に関わらず、フリーランスだからといって連絡が取りにくい状況が続くと、企業は不安を感じます。緊急時の対応可能時間を明確にし、営業時間外でも重要な連絡には迅速に対応する体制を整えることが重要です。

例えば、「平日9-18時は1時間以内に返信、緊急時は30分以内に第一報を送る」など、明確なコミュニケーションルールを設定し、それを遵守することで、企業側の安心感を高めることができます。出社している場合でも、帰宅後の重要な連絡には適切に対応するなど、プロフェッショナルとしての責任感を示すことが求められます。

最も重要な「見えないスキル」：コミュニケーション力

質疑応答からわかるプロ意識

技術力と同じか、それ以上に重要視されるのがコミュニケーション能力です。面接や打ち合わせでの質疑応答は、単なる情報交換ではなく、そのフリーランスのプロ意識を測る重要な機会となります。

的確な理解力と回答力：企業が特に注目するのは、質問の意図を正確に理解し、求められている情報を適切に提供できるかという点です。技術的な質問に対して専門用語を多用して答えるだけでなく、相手の技術レベルに合わせて分かりやすく説明できる能力が重要です。

例えば、「このプロジェクトでの最大の技術的チャレンジは何でしたか？」という質問に対して、単に技術的な困難を列挙するのではなく、「○○という課題があり、△△のアプローチで解決し、結果として××の成果を得られた」という構造で回答できることが、論理的思考力の証明となります。

説明力と論理構成：自身の経歴やスキルについて、時系列で整理し、各段階での学習内容や成果を明確に説明できることは、プロジェクト管理能力の間接的な証明にもなります。複雑な技術的内容を、非技術者にも理解できるように説明できる能力は、将来的にクライアントとの橋渡し役としても期待されます。

積極的な質問力：優秀なフリーランスは、自分が質問される側に留まらず、プロジェクトの詳細や期待値について積極的に質問します。「技術仕様以外に、ユーザビリティの観点で気をつけるべき点はありますか？」「開発途中でのフィードバックサイクルはどのような頻度を想定されていますか？」など、プロジェクト成功のために必要な情報を主体的に収集する姿勢が評価されます。

コミュニケーションのプロが実践する3つのポイント

長年の人材マッチング経験から見えてきた、優秀なフリーランスが実践している具体的なコミュニケーション手法をご紹介します。

1. 結論ファースト思考
ビジネスコミュニケーションでは、結論を最初に述べ、その後に根拠や詳細を説明する構造が重要です。「この機能実装は可能です。理由として、過去に類似の開発経験があり、必要なライブラリも習得済みです。具体的には...」という流れで話すことで、相手の理解を促進できます。

この手法は、限られた時間での効率的な情報伝達だけでなく、論理的思考力の証明にもなります。プロジェクト中の報告やプレゼンテーションでも同様のスキルが活用されるため、企業は安心してコミュニケーションを任せることができます。

2. 自分の貢献を明確にした成果報告
「効率が良くなりました」ではなく「私が設計・実装したキャッシュ機能により、APIレスポンス速度が30%向上しました」、「多くの経験があります」ではなく「私がテクニカルリードとして参画した5年間で、20プロジェクト中18プロジェクトを予定通りリリースに導きました」など、自分の役割と具体的な成果を明確に関連付けることが重要です。

企業が知りたいのは、単にプロジェクトの成果ではなく、「あなたを採用することで得られる具体的なメリット」です。チームの一員として参加した成果と、自分が主導した成果では、企業の評価は大きく異なります。

3. 相手視点での情報整理
優秀なフリーランスは、自分が伝えたいことではなく、相手が知りたいことを優先して情報を整理します。技術者であれば技術的な詳細を、マネージャーであればスケジュールやリスクを、経営陣であれば事業インパクトを中心に説明内容を調整します。

この能力は、ステークホルダーが多様なプロジェクトにおいて特に重要です。開発チーム、デザインチーム、マーケティングチーム、経営陣など、それぞれ異なる関心事を持つメンバーと効果的にコミュニケーションできるフリーランスは、プロジェクトの潤滑油として高く評価されます。

実践的スキル向上のための具体的アプローチ

技術力の可視化と継続的向上

市場価値の高いフリーランスは、自身の技術力を客観的に示すための取り組みを継続的に行っています。GitHubでのコード公開、技術ブログでの知見共有、勉強会での発表など、アウトプットを通じてスキルを証明する活動が重要です。

特に、最新技術へのキャッチアップ能力は重要な評価ポイントです。例えば、AI・機械学習分野でのPyTorchやTensorFlow、Web開発でのNext.jsやTypeScript、ゲーム開発でのUnreal Engine 5など、業界のトレンドに合わせたスキルアップデートを継続的に行っている証拠を示すことが求められます。